榎本百香 琵琶ソロリサイタル(11/16) 日本橋劇場
数年前に、雑司ヶ谷界隈の古民家でのライブに何度かお邪魔した薩摩琵琶奏者、榎本百香嬢の初のソロリサイタル。
場所は、日本橋劇場。
ちなみに、古民家でのライブは、キャパ的に、数名~10名くらいというこじんまりとした会でしたが、この日は、客席の数を概算したら、300弱、それがほぼ満員!
すげえ!
と、まずは、動員でびっくり。
そして、演奏が始まるとまたその内容にびっくり。
ちなみに、演奏されたのは全部で4曲でしたが、そのなかで、世間一般的(?)な薩摩琵琶的なイメージのものは、わずか1曲でありました。
まず、1曲目は、江戸時代の浮世絵師の(かつ猫好きとしても知られている)歌川国芳の絵に触発されて作られたというインスト曲。
ちなみに、薩摩琵琶というのは、撥、それも、使いようによっては、凶器にもなりうる(?)存在感のある撥を使って演奏されるわけですが、この1曲目の途中で、初めて、撥を使わない指弾きでの演奏に遭遇。
つづいて、2曲めは、敦盛。
ところで、この曲、彼女の属する鶴田流の創始者の鶴田錦史(つるたきんし)という人が作曲しているのですが、かの武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」という曲に参加していることで、世界的に知られているとのことですが、この人、調べてみたら、なんと女性、しかし、後半生は、男装していた、さらに、奥さんもいた、という、なんというか、ドラマか映画にできそうな波瀾万丈な人生を送った方のようです。
1551夜「さわり」佐宮圭 松岡正剛の千夜千冊
日本琵琶楽協会 各流派の特色
休憩をはさんでの3曲めは、宮沢賢治の作品に曲をつけたもの。
しかも、誰もが知る宮沢賢治の作品ではなく(というか、私は知らなかった)、かつ、作曲者は外国人。
どういう経緯で作られたのかは知らないのですが、インストでなく、歌詞(しかも英訳とかでなく日本語)に外国人が作曲するというのは、なかなかに大胆不敵な試みなのではないかと。
そして、ラストが、鎮魂雅哥。
彼女の師匠である田中之雄氏が、かつてCDに収録した作品を、初めてライブで演奏、とのことでした。
この曲では、DTMにあわせての演奏だったわけですが、通常のポップソングのように、最初から最後まで、一定のビートがきざまれていて、というようなものではなく、サウンドスケープ的というか、自然環境音がまじっていたり、無音の間もかなりあったりして、譜面上はいったいどういうことになっているのかと思わせるような作品でした。
と、いうわけで、曲ごとに、チャレンジングな要素が目白押しで、伝統芸能、あるいは純邦楽、というよりも現代音楽的な演奏会という感じだったのかなと。
そしてそれは所属流派のなかにDNA的に受け継がれているスタンスなのかなと、今にして思う次第。
琵琶のあらたな可能性を探る彼女のアグレッシブな挑戦が、今後も楽しみであります。
1、浮世絵の音色 国芳ファンタジー 「滝夜叉姫」「たまやたまや」 委嘱初演 作曲:神山奈々
2、敦盛 作詞:田中涛外 作曲:鶴田錦史
3、View from the Bottom of a Stream(2016)
text from 宮沢賢治の「やまなし」 委嘱初演 作曲:Elizabeth Brown 邦楽打楽器:冨田慎平
4、鎮魂雅哥(琵琶+ディジタルパフォーマンス)
"Deep Red Pathos" by BIWA and Digital Performance ライブ初演 作曲+サウンドアーキテクト 浦尾画三 和歌作詞:池田正城 メディアソフトウエアプレイヤー 大黒淳一
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